好きか、と聞かれるとちょっと違うのですが、なんだか心に残り、時々読み返す詩があります。中原中也の『在りし日の歌』という詩集の中にある"春日狂想"というもので、中也が亡くなる年(昭和12年)、30歳の時に書かれたものです。今の心境とどこか重なるところがあり、ふとまた手にしました。一部、当時の表記と異なる部分がありますがこういう詩です。
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春日狂想
≪1≫
愛するものが死んだ時には、
自殺しなけあなりません。
愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。
けれどもそれでも、業(ごう)が深くて、
なほもながらふことともなつたら、
奉仕の気持ちに、なることなんです。
奉仕の気持ちに、なることなんです。
愛するものは、死んだのですから、
たしかにそれは、死んだのですから、
もはやどうにも、ならぬのですから、
そのもののために、そのもののために、
奉仕の気持ちに、ならなけあならない。
奉仕の気持ちに、ならなけあならない。
≪2≫
奉仕の気持ちになりはなつたが、
さて格別の、ことも出来ない。
そこで以前(ぜん)より、本なら熟読。
そこで以前(ぜん)より、人には丁寧。
テムポ正しき散歩をなして
麦稈真田(ばくかんさなだ)を敬虔に編み
まるでこれでは、玩具の兵隊、
まるでこれでは、毎日、日曜。
神社の日向を、ゆるゆる歩み、
知人に遭えば、につこり致し、
飴売爺々と、仲よしになり、
鳩に豆なぞ、パラパラ捲いて、
まぶしくなつたら、日蔭に這入り、
そこで地面や草木を見直す。
苔はまことに、ひんやりいたし、
いはうやうなき、今日の麗日。
参詣人等もぞろぞろ歩き、
わたしは、なんにも腹が立たない。
(まことに人生、一瞬の夢、
ゴム風船の、美しきかな。)
空に昇つて、光つて、消えて
やあ、今日は、御機嫌いかが。
久しぶりだね、その後どうです。
そこらの何処かで、お茶でも飲みましょ。
勇んで茶店に這入りはすれど、
ところで話は、とかくないもの。
煙草なんぞを、くさくさ吹かし、
名伏しがたい覚悟をなして、
戸外はまこと賑やかなこと!
ではまたそのうち、奥さんによろしく、
外国に行つたら、たよりを下さい。
あんまりお酒は、飲まんがいいよ。
馬車も通れば、電車も通る。
まこと人生、花嫁御寮。
まぶしく、美(は)しく、はた俯いて、
話をさせたら、でもうんざりか?
それでも心をポーツとさせる、
まことに、人生、花嫁御寮。
≪3≫
ではみなさん、
喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テムポ正しく、握手をしませう。
つまり、我等に欠けてるものは、
実直なんぞと、心得まして。
ハイ、ではみなさん、ハイ、ご一緒に
テムポ正しく、握手をしませう。


がんばれ、松っちゃん! 2011マン島TT